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宅建受験は暗記型じゃダメ


宅建受験は暗記型じゃダメ №1

Aが、Bに代理権を授与してA所有の土地を売却する場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。宅建の過去問 平成12年[問1]

肢1

Bが未成年者であるとき、Bは、Aの代理人になることができない。
 
この肢の解説が下のように書いてあったら 皆さん満足するでしょうか?

肢1

誤り。未成年者でも代理人になることができる(民法102条)。

これに満足する人を「暗記型」と言います。

暗記型は宅建受験者の大多数を占めます。
根本の原因は 初等中等教育(小学校・中学校・高校)にあると思ってます。
特に現在の初等中等教育は 「暗記ができない人から順番に落ちこぼれてね!」という雰囲気に満ちたものだからです。

「暗記型」がなぜダメかと言うと、上のような解説に満足してる人は「ほぼ100%が法律をつまらない」と感じちゃうと思うからです。

せっかく法律の世界を覗くチャンスがあったのに、それをつまらないと感じさせちゃ、それこそ指導者がダメと思うんですが、欲張りでしょうか?


宅建受験は暗記型じゃダメ №2
 
暗記型から脱却して、法律を少しでも面白いと感じて頂くには、理由づけが一番です。
№1の解説で分かることは、
「未成年者でも代理人になれることが民法102条に書いてある」ですね。

そこで、
「じゃ覚えちゃおう!」あるいは「民法102条の条文を見てみよう!」っていう学習パターンは暗記型です。

そうじゃなくて
なぜ未成年者のような子供を代理人に出来るんだ?という発想で本を読んでみることが必要なんです
こういう発想に立つと
いわゆる我々の常識外の何かが潜んでいるのではという好奇心を持って勉強できます
この好奇心こそが法律を面白くする最大の要素
です。


宅建受験は暗記型じゃダメ №3
 
司法試験(口述試験)での会話です。
 
(試験委員)
私からお尋ねします。
未成年者は代理人になれますか?
 
(受験者)
はい。なれます。102条です。
 
(試験委員)
102条の趣旨は?
 
(受験者)
代理の効果は直接本人に帰属しますので
未成年者等の行為能力がない者を代理人に選任しても
未成年者の財産を危うくする心配がなく
大丈夫だからです。
 
(試験委員)
理由が弱いね!
 
(受験者)
…いきなりパニック…
 
私の知人が実際に体験したことを後で聞いたものです。
 
なぜ「理由が弱い」と言われてしまったか
皆さんは分かるでしょうか?
 
気の利いた宅建の過去問集には、
「代理の効果は直接本人に帰属するので、未成年者等の制限行為能力者を代理人にしても未成年者の財産を危うくする心配がない。したがって未成年者でも代理人になることができる。」って解説してあるのにね…。


宅建受験は暗記型じゃダメ №4
 
意地悪い質問でした。
大丈夫!
宅建試験の講師でもまず答えられないでしょうから。
うえの受験者の答えでも ちゃんと司法試験受かってますし…。
 
じゃこれから、
皆様が本来お持ちになっている【好奇心】を刺激するために、私の商売のネタを無料公開しちゃいますね。
 
法律の世界に限らず世の中の理由って大別すると
弱い理由】(副次的な理由)
強い理由】(根本的な理由)
の2つしかない
んです。
 
【弱い理由】とは、

~でも【大丈夫】という言葉で結ばれる理由です。
未成年者でも代理人になれるかと聞かれたとき、代理の効果は直接本人に帰属するので、未成年者の財産を危うくしないから【大丈夫】と答えた人がいたら、それは【弱い理由】です。
 
しかし【弱い理由】じゃ、余り人を説得できません。
【弱い理由】で説得されちゃう人がいたら、その人は余り「お利口さん」じゃないです。
 
一方
【強い理由】とは、
~することが【必要】という言葉で結ばれる理由です。
 
どんな人でも【強い理由】を示されると、説得されやすいです。
例えば
奥さんから「私と結婚した理由は何?」と聞かれたとき、「お前が【必要】だから」と答えておけば、大体無事に済むことになってます。
でも、
「お前でも【大丈夫】だから」なんて答えたら、家庭の平和が保障されないことは既婚者でなくても容易に想像がつくことですね。
 
独身の方! 異性を口説くときは是非参考にしてください。
ポイントは、「あなたが【必要】」ということを、どこまで具体的に説き伏せることが出来るかですぞぉ~!


宅建受験は暗記型じゃダメ №5
 
代理の話を、【強い理由】(~することが【必要】という言葉で結ばれる理由)を使って、出来るだけ説き起こしてみましょう。
 
《1》

そもそも民法が代理制度を設けている理由は?
「本人の利益」のために【必要】だからです。
 
《2》

どうして?

第一に
複雑化している現代社会では、本人自身が行なえたとしても他人(代理人)に任せた方が合理的であり、かえって「本人の利益」になることが多いから。
お客さん(本人)が不動産屋さん(代理人)に依頼する関係を見れば分かりますね。これを任意代理と言います。本人が任意に代理人を選任するのでこの名前が有ります。
 
第二に
本人が未成年者・成年被後見人(旧禁治産者)の場合は、保護者(代理人)に行なわせた方がむしろ「本人の利益」になるから。
何しろ本人は普通の大人じゃないので、保護者に行なわせた方が悪い人の餌食になりにくいです。こういう関係を法定代理と言います。本人は普通の大人じゃないので、本人に代わって法律が代理人を選任してあげるので法定代理って言うんですね。
 
《3》

代理が成立すると代理人がした契約の効果が直接本人に帰属するのはなぜ?
そもそも民法が代理制度を設けているのは「本人の利益」のために【必要】だからです。
「本人の利益」のためには、代理人がした契約の効果をストレートに(直接に)本人に帰属させた方がイイです。
代理人がした契約の効果を一度代理人に帰属させ、それをさらに本人に帰属させたんじゃ遠回りなので「本人の利益」と言えないからです。
 
《4》

「代理が成立するのに代理人の権限(代理権)がいる」のはなぜ?
代理人の権限(代理権)とは、例えばお客さん(本人)が不動産屋さん(代理人)に「この不動産を3000万円以上で売ってきて下さい」と依頼した場合、不動産屋さんが持っている「3000万円以上でなら売れる権利」のことです。
この場合、不動産屋さんが勝手に2000万円で売ってきてもOKとなったんじゃ「本人の利益」になりません。代理は「本人の利益」のために【必要】だからこそ出来た制度なので、「本人の利益」を確保するためには、代理人の権限(代理権)は絶対に【必要】なのです。


宅建受験は暗記型じゃダメ №6
 
代理の話は、つまるところ、
「本人の利益」のために【必要】、
というキーワードで理由付けできそうですね。
 
続けます。
  
《5》

権限の定めのない代理人は、
1. 保存行為
2. 利用行為
3. 改良行為
の3つ以外出来ないのはなぜ?

権限の定めのない代理人とは 権限(代理権)の範囲が不明確な代理人です。
例えば、お客さん(本人)が不動産屋さん(代理人)に「この建物を売ってきて下さい」とだけ依頼し値段を決めなかった場合、この不動産屋さんが権限の定めのない代理人です。
 
不動産の売却を依頼された場合、値段は「本人の利益」にとって最重要問題です。
でも、依頼された値段が不明あるいは不明確な場合もあるでしょう(めったに無いけど)。
こういう場合の代理人を権限の定めのない代理人というのです。
 
この場合、代理人はその家を売れません。
値段が分からないのに売ってこれたんじゃ「本人の利益」とは言えないからです。
 
じゃ何も出来ないの? となると違います。
 
お客さんとの明確な意思の疎通はないけれど、一般的にみて、お客さんから感謝される行為(意思の疎通はないけれど「本人の利益」のためになる行為)だけは出来ます。代理は「本人の利益」のために【必要】な制度だからです。
 
お客さんから感謝される行為
を、
1. 保存行為
2. 利用行為
3. 改良行為
と言うんです。
 
1. 保存行為っていうのは、例えば売却を依頼された建物の塀が地震で少し傾いたので修理しておくことです。
 
2. 利用行為っていうのは、その家の軒先を露天商が貸してくれというので1日2万円で貸してお客さんのために収益を図ってあげるような行為です。
 
3. 改良行為とは、その家が後で売れやすいようにペンキを塗ったり掃除しといてあげることです。


宅建受験は暗記型じゃダメ №7
 
代理の話は、つまるところ、
「本人の利益」のために【必要】、
というキーワードで理由付けできることを、少しは証明出来たでしょうか?
 
この話を復代理制度に関連させて、「暗記じゃダメ」シリーズをオシマイにします。
 
話を単純にするため、以下では任意代理を想定します。
 
復代理人って、「副」代理人とは書きませんよね。
代理人が反「復」されるから 「復」代理人と書きます。
代理人の「サブ(副)」じゃ無いっていうこと。
 
つまり、
代理人は自分で代理人の権限(代理権)を行使しないで、他の人を選んで、その人に代理させることも出来ます。
この場合、代理人からさらに代理人として選任された人を復代理人と言います。
 
代理の話は「本人の利益」のために【必要】な制度なので、代理人が万一急病で倒れちゃったりしたとき、「残念でしたね。今度は健康な人に頼んでね!」と引退されたんじゃ、とても「本人の利益」とは言えませんね。
そこで出来たのが復代理制度です。
 
ところで、復代理も「本人の利益」のために【必要】な制度なので、次の取扱いがされます。
 
《1》

復代理人を選任するのは代理人です。本人じゃないです。
なぜなら、
そもそも任意代理は、他人に任せた方が合理的だから生まれた制度です。それなのに本人の手を煩わせたんじゃ、かえって「本人の利益」と言えないからです。
 
《2》

とは言っても、代理人がいつでも勝手に復代理人を選任できたんじゃ「本人の利益」にならないことは明白ですね。
「もうやんなっちゃったから復代理人を選んじゃおう!」
これじゃ本人がたまりません。
そこで任意代理人は
1. 本人のOK(許諾)
2. やむをえない事情(例:急病)
のどちらかがないと、復代理人を選任できないことになってます。
 
《3》

代理人は復代理人を選任しても、自らの代理権を失いません。
復代理は代理人が反「復」される制度であり、下請けに出したからと代理人が引退出来たんじゃ「本人の利益」とは言えないからです。
パソコン用語で言えば 復代理人は「本人の利益」のためのバックアップファイルです。


2003年10月10日(金)記
2010年11月11日(木)追記
2023年12月07日(木)追記



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