最後に更新した日:2021年03月13日(土)
宅建業法を勉強するときの「従業者」は、宅建業に従事する従業員に限定されることはなく、受付、秘書、運転手等の業務に従事する者も対象になる。「従業者」の意味について、誤っって覚えないないよう、注意を促した記事。
次の条文を読んで下さい。
(1)
宅地建物取引業者又はその代理人、使用人その他の従業者(以下この条において「宅地建物取引業者等」という。)は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。宅建業法47条の2、1項
(2)
宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない。宅建業法48条1項
(3)
従業者は、取引の関係者の請求があつたときは、前項の証明書を提示しなければならない。宅建業法48条2項
(4)
宅地建物取引業者は、国土交通省令で定めるところにより、その事務所ごとに、従業者名簿を備え、従業者の氏名、住所、第1項の証明書の番号その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。宅建業法48条3項
(5)
宅地建物取引業者は、取引の関係者から請求があつたときは、前項の従業者名簿をその者の閲覧に供しなければならない。宅建業法48条4項
(6)
宅地建物取引業者の使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、宅地建物取引業の業務を補助したことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。宅地建物取引業者の使用人その他の従業者でなくなつた後であつても、また同様とする。宅建業法75条の2
(7)
法第15条第1項の国土交通省令で定める数は、事務所にあつては当該事務所において宅地建物取引業者の業務に従事する者の数に対する同項に規定する取引主任者(同条第2項の規定によりその者とみなされる者を含む。)の数の割合が5分の1以上となる数、前条に規定する場所にあつては1以上とする。宅建業法施行規則6条の3
※
法第15条第1項
宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条及び第50条第1項において「事務所等」という。)ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の取引主任者(第22条の2第1項の宅地建物取引主任者証の交付を受けた者をいう。以下同じ。)を置かなければならない。
※
「取引主任者」は、2015年(平成27年)4月1日から「取引士」に名称が変わりました。
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上の(1)~(7)の条文について、「従業者」ないし「宅地建物取引業者の業務に従事する者」とは、原則として、その宅建業者の全従業員(代表者・役員を含む)を指します。
それに対して、全従業員ではなく「宅建業に従事する従業員に限定される」と教える講師がいますが、これは誤りです。
理由は条文の文言(もんごん。言い回し)に反するからです。
上の(1)~(7)の条文を、もう一度良く読んで下さい。
単に「従業者」としか書いてないです。
あるいは、単に「宅地建物取引業者の業務に従事する者」としか書いてないです。
条文上は、「宅建業(8つの取引)に従事する者に限定されていない」のです。
したがって、宅建業法を勉強するときの「従業者」は、宅建業に従事する従業員に限定されることはなく、受付、秘書、運転手等の業務に従事する者も対象になります。
そこで例えば、全従業員が10人の事務所では最低2人の専任の取引士を置かなければなりません。
なお、本店は常に事務所と扱われます。
そこで、本店では建設業だけを営み宅建業は営んでいない業者がいた場合、条文上は、その本店の全従業員数の割合が5分の1以上となる数の、専任の取引士を置かなければなりません。
建設業だけを営む本店に50人の従業員がいたと仮定すると、そのうちの最低10人は専任の取引士でなければならないことになります。
宅建業の他に建設業など他の業種を兼業している宅建業者については、上記(7)の条文に関して、国土交通省が「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」というページで、次のような見解を述べています(これは、名前の通り「考え方」であり、宅建試験の問題を解くときの参考になるに過ぎません。最高裁判所の判例のように、問題の結論を左右するチカラを持つものではないです。つまり法源にはなりません)。
イ.
宅建業を主として営む者は、全体を統括する一般管理部門の職員も、宅地建物取引業者の業務に従事する者に該当する。
ロ.
そうでない者は、代表者、宅建業を担当する役員(非常勤の役員及び主として他の業種も担当し宅建業の業務の比重が小さい役員を除く)及び宅地建物取引業の業務に従事する者が、宅地建物取引業者の業務に従事する者に該当する。
上記ロ.に引きずられ、条文の文言を吟味しなかったのが、誤った見解が出現した原因と思われます。
※
受験者の皆さんは難しく考えないで、宅建業法が「従業者」という言葉を使う場合、それは「全従業員」を指すのだな! と思っていれば十分です。
最初に投稿した日:2006年04月17日(月)
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