三百代言

(1)

【質問】
「売買契約の目的である権利の一部が他人に属する場合は善意の場合にしか解除できないのに,権利の全部が他人に属する場合は悪意でも解除できるのは,なぜですか?」

【回答】
権利の一部が他人に属する場合の買主と,権利の全部が他人に属する場合の買主を比べ,買主をどのくらい保護すべきか検討したのです。
全部が他人の物を買った人は,一部が他人の物を買った人より降りかかる損害は大きいので,より強く保護すべきだから,悪意でも解除を認めるんです。

上の質問に対する,上の回答は誤りです。
降りかかる損害が大きいかどうかで,両者の結論が違ってくるのではないです!

(2)

「権利の一部が他人に属する場合は善意の場合にしか解除できない」理由は,悪意の場合は期待を裏切られたとは言えない点にあります。

そもそも売主の担保責任は買主の期待を保護する制度です。

 (他人)C … (売主)A → (買主)B

BがAから100uの土地を買ったが,一部(30u)が他人Cの所有だったのが,「権利の一部が他人に属する場合」の典型ですが,悪意のBは,一部期待を裏切られたと言えます。

100u買ったのに売主Aの分70uしか引き渡してもらえないからです。

だから,悪意のBでも契約の一部(30u)の解除はできます。

民法では契約の一部解除のことを代金減額請求権と表現するのです。

したがって,悪意のBには代金減額請求権があります。
一部(30u)の代金をオマケしろ,ということです。

しかし,Bは100u全部について,期待を裏切られたわけではありません。
70u分は引き渡してもらえるからです。

そこで,悪意のBは契約の全部解除(100u)はできないことになります。

民法では単に解除と表現したら全部解除を意味するのです。

(3)

「権利の全部が他人に属する場合は悪意でも解除できる」理由は,悪意の場合でも期待を裏切られたと言える点にあります。

そもそも売主の担保責任は,買主の期待を保護する制度です。

 (他人)C … (売主)A → (買主)B

BがAから100uの土地を買ったが,全部(100u)が他人Cの所有だったのが,「権利の全部が他人に属する場合」の典型ですが,悪意のBでも,期待を裏切られたと言えます。
だから,悪意のBでも契約の全部(100u)解除ができます。

では,どうして悪意のBなのに期待を裏切られたと言えるのでしょうか?

全部の他人物売買というのは先物取引と考えると理解しやすいです。
「先物取引」は株式売買や外国為替取引で有名ですが,これは現物取引の反対語。
「物がまだ売主の元に無い時点での取引」が先物取引ですね。

売主Aは買主Bに言うでしょう。
「今はCの所有だが,私が現物を仕入れてちゃんとするから大丈夫!」と,Bに期待を持たせます。

そう言われた瞬間にBは悪意になります(C所有であることを知ります)。
でも全然大丈夫じゃなかった。
Bは期待を全部(100u分)裏切られたのです。

だから,悪意でも解除(全部解除)できるようにして,買主の期待を保護するのです。

売主の担保責任は6つに大別できますが,細かい点についてまで全部が,「買主の期待を保護する」というキーワードから理由付けできます。

平成18年5月20日(土)記



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