最後に更新した日:2021年10月15日(金)
(1)
私の周りには、
創造性や独創性は、無から生まれると思っている人が多いです。
そういう人は、無から有を生み出すのが才能、と考えています。
(2)
しかし、これは全然違います。
脳科学者の茂木健一郎さんや数学者の藤原正彦さんが言っているように、「無から有は生まれない」です(手軽に読める文献としては、文藝春秋2008年5月号)。
私の考えでは、
創造性や独創性は、すでにある「有」を別の「有」に組み替える作業です。
したがって、
いままで勉強して来なかった人の脳ミソには、すでにある「有」の部分が存在しないので、別の「有」に組み替える前提を欠きます。
勉強して来なかった人が、創造性や独創性をクチにする時、私は必ず、マユにツバをつけて聞きます。
(3)
宅建試験の勉強に関連づけて、もう少し書きます。
「無から有は生まれない」ということは、実は、法律の大原則でもあるんです。
AがBに不動産を売り、その不動産をBがCに転売しました。
図に描くと、
A → B → C
です。
この場合、Bがその不動産について無権利者だったとします。
そうすると、「無から有は生まれない」ので、
A → B(無) → C(無)
となります。
つまり、Bが無権利者だったらCも無権利者です。
これが、皆さんが宅建の民法を勉強する時にも大原則になります。
(4)
こういう大原則を知らないで、対抗要件とか登記を勉強している人が、宅建受験者にはとても多そうで、心配です。
何でもかんでも「民法は取引の安全だ!」と口走る受験者がいますが、なぜ取引の安全を図らなければならないか、を考えなければダメです。
「無から有は生まれない」ので、取引の安全を図らなければならない「場合がある」のです。
原則はあくまで、「無から有は生まれない」ので、
A →B(無) → C(無)
となります。
※虚偽表示
AB間が無効になった原因が虚偽表示だったら、原則が修正され、Cが善意の場合に限って、Cの取引の安全が図られます。
A →B(無) → C(有)
つまり、Cが善意だったら(AB間の虚偽表示を知らなかったら)、Cに対しては「無から有が生まれる」ことにしてあげて、Cの取引の安全を図ってやる(Cにその不動産の所有権を認めてやる)のです。
しかし、こういう取扱いは、「無から有は生まれない」大原則の、結構めずらしい例外なのです。
ここまでの論理(理屈)の流れを知らなかった人は、これを機に、御自分の宅建参考書に書き込むなどしておくといいです。
(5)
「無から有は生まれない」ということは、
脳科学や数学に限らず、法律の大原則でもあるという話でした。
最初に投稿した日:2008年07月09日(水)
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