三角関係と宅建試験

(1)

普通は、三人の男女の複雑な恋愛関係を三角関係と言います。

登場人物が二人までなら、単純で幸せなんですけどね。

三人になると、われわれ人間の脳は、途端に「複雑だなぁ~」と感じちゃいます。

この複雑さが、恋愛関係では悲劇の始まりになるのは、ご存知の通りです。

(2)

宅建試験になかなか合格できない人がいます。

その大きな原因が、三角関係に慣れていないことです。

これから書く三角関係は、恋愛関係のことじゃないです。

宅建合格に必要な三角関係!

今はまだ、良いネーミングが見つからないので、見切り発車で文章を続けます。

(3)

★Aが所有者として登記されている甲土地がある。
★甲土地上にBが所有者として登記されている乙建物がある。

こういう問題が出題された場合は、登場人物が二人(AとB)なので、比較的単純で幸せです。

このように登場人物が二人しかいないのに、上の事例を「複雑だなぁ~」と感じちゃった人がいたら、精密検査が必要です。

どんな予備校に何百万円払っても、それだけでは治りません。

脅かしちゃいましたね、スイマセン!

ガン検診じゃないので精密検査なんかないですが、宅建の勉強以前の話として、国語力に相当なハンディがあります。

人一倍「文章を読む」訓練をし、いわゆる活字に慣れなければダメです。

登場人物が二人しかいないのに、上の事例を「複雑だなぁ~」と感じちゃうと思われる人は、私の実感では、全受験者の3割から4割です(ディスレキシア読字障害の人を除く)。

(4)

★Aが所有者として登記されている甲土地がある。
★甲土地上にBが所有者として登記されている乙建物がある。
★CがAから甲土地を購入した。

Cの登場によって、登場人物が三人(AとBとC)になりました。

宅建合格に必要なのは、こういう三角関係の事例を、何のストレスもなく「結構単純じゃん!」と感じられることです。

登場人物が三人になると、国語力に自信がある人でも、法律の堅苦しい言い回しに慣れていなければ、「複雑だなぁ~」と感じちゃうのが一般です。

だから宅建では、すでに国語力に自信がある人でも、ある程度は法律の「文章を読む」訓練をしないとダメ。

一番即効性があるのは、早く過去問に触れることです。

(5)

実は、

★Aが所有者として登記されている甲土地がある。
★甲土地上にBが所有者として登記されている乙建物がある。
★CがAから甲土地を購入した。

という三角関係の事例は、平成19年[問13]賃貸借契約(借地借家法)の本試験問題なんです。

この問題の正解肢(4)をドリル形式(一問一答)に直すと、こうなります。

Aが所有者として登記されている甲土地上に、Bが所有者として登記されている乙建物があり、CがAから甲土地を購入した。BがAとの間で期間を定めずに甲土地の借地契約を締結している場合には、Cは、いつでも正当事由とともに解約を申し入れて、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。答はバツで正解肢】

皆さんは、何のストレスもなく「結構単純じゃん!」と感じられましたか?

(6)

もうスグ本試験だという人がこれを読んでも遅いですが、これから宅建の勉強を始めようとする人は、もう少しお付き合い下さい。

上の平成19年[問13](4)の三角関係が今は分からなくても、大丈夫です。

教科書や参考書を読んだら、早く過去問に触れる勉強を続けて行くと、ABCの3人を抜き出して、それを理屈に当てはめる作業に加速度が付いて来ます。

最初は1日5肢がせいぜいだったのに、本試験直前には1日で200肢出来た、なんてザラです。

そしたら合格ですよ!

(7)

これから宅建の勉強を始めようとする人は、本屋さんで過去問集を手に取って、平成19年[問13](4)の解説を読んでみるといいです。

市販のヤツは1社を除いて、次のような解説になっているはずです。

期間の定めのない借地権は存続期間が30年だから、その30年間は、地主(A)に正当事由があっても、借地人(B)に解約の申入れができない。したがって、正当事由があってもCがBに解約の申入れをすることはできない。

こういう解説を読んで「何を言っているか分からない」と感じた人が正常なんです。

そう感じる人のほうが、断然国語力があります!

なぜなら、

30年間は、地主(A)に正当事由があっても、借地人(B)に解約の申入れができない。

というフレーズと

したがって、正当事由があってもCがBに解約の申入れをすることはできない。

というフレーズとの間に論理飛躍があるからです。

つまり、地主Aが借地人Bを追い出せないことが、なぜ、CがBを追い出せなくなることにつながるのかについて、全然説明がないのです。

AとBの二人の関係の説明が急にCを加えた三角関係の結論になっちゃってるんですね。

市販のヤツは1社を除いて、全部こういう解説です。

予備校・出版社の解説でさえこの有り様…。

だから皆さんが、勉強を始めたばかりの頃は、宅建合格に必要な三角関係について「複雑だなぁ~」と感じちゃっても、全然心配ないです。

毎日コツコツと過去問に触れて、法律の「文章を読む」訓練をして行って下さい。

平成20年10月15日(水)記
平成22年11月12日(金)追記


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