試験委員の周辺事情(1)
宅建試験を行うのは、皆さんが受験申込みをした「財団法人 不動産適正取引推進機構」だと思っているかも知れないけど、ホントは違います。
宅建試験は、各都道府県知事が行うのです(宅建業法16条)。
不動産適正取引推進機構は、試験事務について、各都道府県知事から委任を受けているに過ぎません(宅建業法16条の2)。
委任を受けた不動産適正取引推進機構は、寄付行為(財団法人の根本規則。株式会社の定款にあたるもの)で、試験委員の任命等について細かく定めています。
例えば次のように定めています。
☆
宅地建物取引士資格試験の問題の作成及び採点を行うため、宅地建物取引士資格試験委員を置く(寄付行為38条)。
☆
試験委員は、試験の内容に関する学識経験者のうちから、理事会の承認を受けて、理事長が選任し、その任期は1年とする。ただし再任を妨げない(寄付行為39条)。
☆
理事長は、試験委員が次のいずれかに該当する場合は、理事会において理事の4分の3以上の議決を経て、その試験委員を解任することができる(寄付行為41条)。
(1)心身の故障のため、職務の執行に堪えないと認められるとき
(2)職務上の義務違反、その他試験委員としてふさわしくない行為があったとき
職務上の義務違反の代表は、秘密ろうえいです。
☆
試験委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職務を退いた後といえども同様とする(寄付行為40条2項、17条7項)
そういうことなので、試験委員の周辺のことは受験者はおろか、予備校にも漏れてこないことになっていますが、公開されている資料を丹念に読んでいくと、案外面白い情報がとれたりすることがあります。
(1)
平成18年度の試験委員の任命は、平成18年3月31日以前になされたと思われます。
試験委員には、3月31日以前に「平成18年度宅建試験問題作成謝金」として、総額で4万円が前払いされています。
この金額が安いか高いかは、私には分かりません。
前払いの意味、前払いされた人数も不明です。
(2)
試験委員に任命されたことがハッキリした以上、その人は問題作成に向けて何らかの準備を始めるでしょう。
3月31日以前にすでに準備を始めた人がいたかも知れません。
試験委員の周辺事情(2)
☆
試験委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職務を退いた後といえども同様とする(寄付行為40条2項、17条7項)。
そういうことなので、試験委員の周辺のことは受験者はおろか、予備校にも漏れてこないことになっています。
でも大体のことは、19年も講師をやっているので分かります。
差し支えない範囲で書いてみましょう。
(1)
試験委員のもとには、担当科目に関する、相当古い過去問までが配布されています。
試験問題が公表されるようになったのは昭和63年からですが、試験委員には、それ以前の過去問の資料(当時の正解率等を含む)が知らされているということです。
(2)
会議で、出題項目が決定されます。
宅建業法の担当だったら、今年も去年に引き続いて「報酬額の限度」の問題を入れよう、とかが決められます。
(3)
出題項目の決定に従って、各自、条文・判例・通達等を整理します。
その際、過去問の資料を参考に、まず正解肢を決めます。
正解肢以外の肢も決定します(これも過去問の資料が参考になります)。
一人数題の四択問題を作成します。
なお、四肢とも過去問ベースでない問題を作ることもあります。
(4)
この時点では、全科目で50問の数倍の問題が作成されています。
(5)
さらに全体会議等で様々な調整がされ、問題・正解番号の配列等が最終決定され、印刷に回されます。
現在印刷は、刑務所ではやっていません。
今年の試験問題はすでに印刷・製本が完了しています。
(6)
私がゴーストライターとして模擬試験の問題を作る時も、上記(3)については、同じ手順でやっています。
他の予備校の先生が作るやつは手抜きが多いかも?
(7)
択一式の本試験は、どんな法律系試験でも「初めに正解肢有りき!」がポイントです。
競馬で言えば「出来レース」。
出題者は、付け馬(不正解肢)を後で探します。
平成18年 9月16日(土)記
令和 3年10月19日(火)記