(1)
本来、勉強は「学びたいから学ぶ」ものです。
対象に興味があるから、それをもっと知りたいという欲求が勉強の動機でなければなりません。
これは人間としての本能でしょう。
(2)
ところで私の理解によると、今から12~3年前の英国サッチャー首相(当時)の教育改革以来、世界的に教育の市場化が推し進められ、現在に至っています。
そして教育の市場化が進められた今では、「生き残るために学ぶ」という人が大多数を占めてしまったように思います。
「学びたいから学ぶ」という人は、どうも少数派になってしまったようです。
今では宅建受験者も、この傾向が顕著です。
(3)
どうして市場原理に組み込まれてしまったかというと、福祉国家の行き詰まりが主な原因だと思います。
失業手当や生活保護費に税金を投入するより、政府を小さくして、民間の競争原理にさらすことで、従業員やその予備軍の雇用能力を向上させるほうが正義だとされたのです。
これが本当に正義かはともかく、世界の趨勢(すうせい)が教育の市場化にまっしぐらという状況は、今のところ止める手段がないように思います。
(4)
市場原理に組み込まれてしまっても、皆さんには、本来、勉強は「学びたいから学ぶ」という姿勢をどこかで残しておいてもらいたい、と切に願います。
これは、人間本能に根ざすものなので、どこかの支配者階級が思いついた政策なんかより、よほど合格のヒントになると思いますよ。
なぜなら、市場原理政策は「学習機会の選択が公平に行われている」ことが大前提でないと成り立たないはずですが、この公平はフィクション(虚構)に過ぎないからです。
(5)
「生き残るために学ぶ」という大多数の人たちの中にも、学ぶことにあまり苦痛を感じず、それ自体楽しみに変えてしまう学習能力を備えている人が、ほんの一部います(例:宅建貴族)。
でも一般の受験者の皆さんは、安易にマネしてはいけません。
私がここでメッセージを送りたいのは、仕事や生活に追われ、ふだん市場原理など考える余裕がない方たちなんです。