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「年」と「年度」は大違い

(1)出題者も間違ってしまった

平成23年度宅建試験の問48肢2は、こんな問題でした。

平成23年版土地白書(平成23年6月公表)によれば、平成22年の売買による土地所有権移転登記の件数は全国で115.4万件となっており、対前年比2.2%減とここ数年減少が続いている。

問48は正しい肢を選ばせる問題でしたが、出題者は、上の肢を正しいものとして用意していました。
でも、この肢は「たった一字のために」正しくなくなってしまいました。

どこかと言うと「対前年比」という部分です。
これを正しい肢にするには「対前年比」としなければならなかったのです。
「度」が有るか無いかは、統計問題では大違いです。

(2)年と年度の違い

統計問題でと表現したときは、1月1日に始まって12月31日までの1年間を指します。暦通りです。

だから、上の問48肢2は「平成22年」の売買による土地所有権移転登記の件数を聞いているので、「対前年比」2.2%減としなければならなかったのです。

これに対して、統計問題で年度と表現したときは、4月1日に始まって翌年の3月31日までの期間を指します。

その根拠は、財政法第11条です。
「国の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わるものとする」と定めているのが財政法第11条です。

わが国の国公立学校の入学式は4月に行われ、卒業は3月ということになっていますね。明治20年代からそうなっているのですが、あれは財政法第11条の会計年度に基づいているわけです。

(3)わが国の会計年度が毎年4月1日に始まる理由

大きく分けて二説あります。

【A説】
昔(平安時代)から、わが国では「年度始め」が春だったため…。
年度始めを春にしたのは、農産物の収穫が秋であることと関連していた。
米などの収穫を終え、その他酒や布などの税をチェックして、それらの数字がミヤコで集計され、新しい会計年度への準備が整う頃には、季節は春になっていた。

【B説】
明治20年代に、明治政府がイギリスの会計年度をマネしたため…。
当時イギリスでは、4月から始まる会計年度を採用していた。

(4)会計年度とは

会計年度とは、収入(歳入)と支出(歳出)を一定期間ごとに区分・整理する場合の、その期間のことです。

会社などの企業にも会計年度(特に事業年度と呼びます)はあります。
でも、企業の場合は「4月始まり」なんていう拘束はないです。事業年度の始まりを何月にしようとOKです!

統計問題は「単なる数字」であり、学問的な匂いが全然しない殺伐とした世界です。そこで、宅建受験者の皆さまに少しでも記憶に残るよう、エピソード的なものをまじえた記事にしてみました。


2011年11月23日(水)記
2021年03月12日(金)追記
2023年10月29日(日)追記


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