(1)
今日は、一般の大学や資格試験の塾・予備校等じゃ書けない話をします。
(2)
10数年前の数字ですが、アメリカの弁護士は約100万人であるのに対して、日本には弁護士が約3万人しかいません。
アメリカの人口は日本の2倍ちょっとですが、それにしても日本の弁護士数はあまりにも少ないと思いたくなります。これが一般の国民感情でしょう。
でも、これには国家が仕掛けた巧妙なカラクリがあるんです。
(3)
日本には、税理士(約7万人)・行政書士(約4万人)・社会保険労務士(約3.5万人)・司法書士(約2万人)・土地家屋調査士(約2万人)・弁理士(約1万人)がいます。これらの職業を合計すると約20万人です。
ところが、アメリカには税理士・行政書士・社会保険労務士・司法書士・土地家屋調査士・弁理士なんていう職業は、全然存在しません。
なぜなら、これらの士業に該当する仕事は、アメリカでは全部弁護士がやっているからです。だから、アメリカには弁護士が100万も必要なのです。
そのために、弁護士になる試験も日本の司法試験よりずっと簡単とのことです。
(4)
「アメリカの弁護士数は100万であるのに対して,日本には弁護士が3万人しかいない。」
この事実だけを鵜呑みにさせられたバカな国会議員は、御用学者等の尻馬に乗って、司法試験制度を改革(改悪?)してしまいました。
その典型が、法科大学院(日本版ロースクール)を卒業していない者には、原則として新司法試験を受験させない! という改革です。
この改革は、少子化に悩む全国の大学には朗報をもたらしました。
法科大学院卒が新司法試験の受験資格とされたことで、何と、全国で74もの法科大学院が誕生したのです。
でも、これはさすがに粗製乱造のそしりを免れないでしょう。
なぜなら、姫路獨協大学法科大学院と大阪学院大学法科大学院は、わずか二名の合格者しか出すことができませんでした。
京都産業大学法科大学院と島根大学の法科大学院に至っては、わずか1名です(平成21年度)。
これをもって、国家が仕掛けた資格ビジネスと評するのは言い過ぎでしょうか?
学費を出す親の立場を考えると、やりきれない思いでしょう。
(5)
お金持ちの子弟じゃなくても、親兄弟に頼らずに自分で学費を捻出して法科大学院に通う人も結構いるとき聞きます。
その場合でも、全部を自分の貯えでまかなえる人は少なく、日本弁護士連合会の調査によると、最高で1,200万円の借金を抱えて勉強しているそうです。
こんな情報を聞いていると、司法試験はついに「資本試験」になってしまったと思わざるを得ません。
手弁当で被疑者・被告人の人権を守るために走り回る、なんていうカッコいい弁護士は、テレビの中だけの話しになってしまいそう…。
(6)
めでたく新司法試験に合格して弁護士になったとしても、彼らには良い就職先がないとも聞きます。
まず、グローバル展開している日本の大企業は、あまり彼らを雇いたがりません。
法科大学院で教えるカリキュラムが主な原因になっていて、法科大学院出身の弁護士なんか不要なのです。価値を認められないから雇わないのです。
こうなると、国家が仕掛けた資格ビジネスの被害者は、学費を出す親にとどまらず、学生本人にも及んでいるようです。
その証拠か、法科大学院の志願者がこの6年間で四分の一に激減した、という統計もあります。
ホント罪な話ですねぇ~!
(7)
最近テレビで、多重債務者の相談に乗ります! と「やさしく語りかける」コマーシャルを見かけるでしょう。
良い就職先がない弁護士の最後の拠り所が、そんな法律事務所だったりします。
こういう法律事務所には、1,000万円の多重債務者から300万円もの手数料をむしりとって社会問題になったものも含まれています。
1,200万円の借金を抱えて猛勉強し、弁護士になった途端に、すでに自分が多重債務に陥っている。そんな多重債務者が多重債務者の相談を受けるなんてホントに皮肉なことですね。シャレにもなりません。
2010年06月05日(土)記
2023年11月14日(火)追記
ページのTOPへ