期待させる

(1)イントロ

「期待させる」

この言葉、法律を理解するときの、最強のキーワードです。

宅建の勉強にも、もちろん役立ちます。

もしかしたら、法律を超えて人生全体に役立つキーワードかも知れません。

(2)定義

期待させるというのは当てにさせるという意味で使います。

マンションを借りたら「藤原紀香が付いていた」というテレビ宣伝がありましたが、藤原紀香が付いてくることは誰も「当てにしない」ので、そもそも「期待させる」という定義から、はずれます。

それに対して、
宅建業者が「この賃貸マンションは駅から徒歩5分です」と宣伝したら、お客さんを「当てにさせる」ことになります。

こういうのが「期待させる」ことです。

(3)「期待させる」のは、悪い事ではない

宅建業者が「この賃貸マンションは駅から徒歩5分です」と宣伝すること自体は、何も悪い事ではありません。

人生は期待の連続!

期待しない人生ほど、つまらないものはないです。

だから、「期待させる」こと自体は、むしろ良い事です。

(4)悪いのは「期待を裏切る」こと

宅建業者が「この賃貸マンションは駅から徒歩5分です」と宣伝していたのに、実際は徒歩40分だったらどうでしょう。

駅から近いことを当てにしていたお客さんは、期待はずれです。

これが「期待を裏切る」ことであり、悪い事の例です。

宅建試験では、「ウソおおげさな広告の禁止(宅建業法)」と「景品表示法(不動産の表示に関する公正競争規約を含む)」で勉強します。

(5)どんな法律も「期待を裏切る」ことを許さない

秋葉原に買物に行ったら、突然ナイフ男に刺されて死んでしまった人がいました。

ナイフ男は、刑法199条の殺人罪で、最高刑は死刑です。

宅建試験には直接関係しないですが、刑法という法律も、「期待を裏切る」ことを許さない趣旨を内に秘めています。

誰でも人は、「自然が与えた寿命まで生きられる」ことを期待して(当てにして)、日々の生活をおくっています。

それを突然裏切られて死んじゃうのですから、刑法は、ナイフ男を許しません。

私たちが車を運転するときに関係する道路交通法という法律も、やっぱり「期待を裏切る」ことを許さない趣旨を内に秘めています。

青信号で発進したら、赤信号を無視してきた車と衝突してしまった!

誰でも車を運転する人は、「青信号は安全」と期待して(当てにして)、います。

それを突然裏切られて衝突されちゃうのですから、道路交通法は、赤信号を無視した運転者を許しません。

(6)宅建に直接関係する法律では…

「期待を裏切る」ことを許さない法律で、宅建試験に直接関係するものは、うんとあります。

上の(4)で書いた、ウソおおげさな広告の禁止(宅建業法)と景品表示法(不動産の表示に関する公正競争規約を含む)以外にも、うんとあります。

全部は書ききれないので、民法から、有名なのを少しだけピックアップしてみます。

(イ)詐欺による意思表示

詐欺による意思表示とは、「だまされて」契約したときです。

例えば、AがBにだまされてBに土地を売った場合です。

この場合、詐欺の被害者であるAの行為が、詐欺による意思表示で、Aは、その契約を取り消せることになっています。

Aの取り消しを認めることで、「期待を裏切る」行為(詐欺)をしたBを許さないようにするのです。

(ロ)心裡留保による意思表示

心裡留保(しんりりゅうほ)による意思表示とは、「つもりがないのに、わざと」契約したときです。

例えば、Aが売る意思もないのに、わざと土地をBに売る場合です。

Aが冗談で、あるいはBをからかって「売ってやる!」と言えば、それは、心裡留保による意思表示になります。

こういうAの発言は、Bを「当てにさせる」(期待させる)のが普通です。

この場合民法自身が、Bの期待を裏切らない手当てをしてくれます。

そこで民法は、心裡留保による意思表示は、原則として有効とします。

Aが売る意思もないのに、土地をBに売ったとしても、その売買契約は効力を有するということです。

そうすれば、Bは土地の所有権を得るので、期待を裏切られなかったことと同じになるのです。

(ハ)売主の担保責任

売主の担保責任とは、売買の目的物に不具合があった場合に、買主が、一定の要件に従って、
・損害賠償請求
・契約解除
・追完請求
・代金減額請求
などの売主の債務不履行責任を追及することです。

買主が、そういう請求を出来るのは、売主が買主の「期待を裏切る」ことをしたからです。

買主は、物を買った以上、「不具合がないと期待する」のが普通なのです。

(7)法律を超えて

「期待を裏切る」ことを許さないのは、法律だけの専売特許じゃないです。

営業課長は、「今月は2件売ってみせます」と宣言した部下が全然売れなかった場合、ニコニコしてはいられないです。

期待を裏切られたからです。

親は、「夏休みは1日3時間勉強する」と言った子どもが全然勉強しなかった場合、やはり期待を裏切られるので、渋い顔になります。

「良い教材」だからと言うので、アフィリエイトサイトが紹介する宅建講座に入学したらダメ講座だった場合など、言うまでもないでしょう。

「期待を裏切る」ことを許さないのは、われわれの常識でもあるわけです。

(8)期待を裏切らない方法

論理的な解決法を示すのは、私でも簡単です。

一つは、
はじめから期待させなければいいのです。

もう一つは、
期待させてしまったら実現すればいいのです。

(イ)はじめから期待させない

はじめから期待させなければ、相手は当てにしません。

したがって期待を裏切ることは、論理的に有り得ないことになります。

宅建合格の「夢」と「期待」

・私は、宅建受験者に「夢」を与える講師です。
・根拠もないのに「期待」を抱かせる講師じゃないです。

と書きました。

少なくとも、有料講座・教材の販売について私がとっている基本的なスタンスです。

世の営業マンも勉強中の子どもたちも、出来もしない大言壮語は吐かなければいいのです。

論理的には以上のようになりますが、実際は、うまく行かない人が多いです。

「はじめから期待させなければいい」ことは分かっているのに、どうしても期待させる行動をとってしまいます。

・人間的な弱さ
・せこい性格
・商業主義

この三つが原因だと思います。

人間的な弱さはどうしても背伸びを誘います
すると、必然的に期待させる行動につながりやすいです。

せこい性格、これは私には治しようがないです。

商業主義(宣伝)は、期待させるのを本質とする経済行為です。
私などが、はじめから期待させるなと言っても、ナンセンスですね。

(ロ)期待させてしまったら実現する

期待させてしまったら実現しましょう。

そしたら、相手を裏切ることは、論理的に有り得ないことになります。

私には、合格率10パーセント台の宅建試験で、期待させてしまったものを実現させる自信がないです。

下でも述べますが、期待させて「実現させないと」詐欺類似行為になる恐れもあります。

そこで、私の有料講座・教材の販売については、「はじめから期待させない」上記(イ)のスタンスでやっています。

論理的には以上のようになりますが、ここでも、うまく行かない人が多く出ます。

「期待させてしまったら実現すればいい」ことは分かっているのに、実際には、うまくいかないのです。

これについても、

・人間的な弱さ
・せこい性格
・商業主義

の三つが関係してくると思います。

人間的な弱さはここでは我慢できない性格と結びつきやすいです
ちょっと我慢すれば実現できたのに、すぐ諦めちゃう性格ですね。

私に言われて、耳が痛い宅建受験者もいるでしょう。

せこい性格、これは私には、やっぱり治せません。

商業主義は、期待させるのを本質とする経済行為ですが、期待させてしまったものを「実現させないと」、詐欺もしくは詐欺類似行為になってしまいます。

信用もガタ落ちになります。

不二家・白い恋人・赤福・船場吉兆、社会保険庁の例を思い出さなくても、明らかでしょう。

(9)最後に

宅建受験者には、特に「民法」をなんの脈絡もなく箇条書き的に暗記する人が多いです。

民法を、そんなやり方で勉強していると、法律全部が嫌いになっちゃいます。

そこで、いろいろな「エピソードと法律をつなげてみよう」と思って書いたのが、きょうの記事です。

「期待させる」なんていう一見変哲のなさそうな言葉にも、いろいろな意味が含まれているという話でした。

法律はオモシロイですよ

平成20年 8月10日(日)記
令和 3年10月21日(木)追記



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